「転んで骨折しただけ」
「年をとったから仕方ない」
そう思われがちな骨折ですが、実はそうではありません。
年齢とともに骨が弱くなって起こる骨折は、その後の生活のしづらさや寝たきり、さらには寿命にも関わることがあります。特に注意したいのは、1回の骨折をきっかけに、次の骨折が続いてしまう“ドミノ骨折”です。
骨がもろくなって起こる骨折とは?
骨粗しょう症などで骨が弱くなると、少ししりもちをついただけ、立った高さから転んだだけでも骨折することがあります。
こうした骨折は、背骨、手首、肩、股関節のまわりによく起こります。これは「年のせい」ではなく、骨が弱っているサインです。
骨折すると、なぜこわいのでしょうか
骨折すると、痛みのために動く量が減ります。
すると、筋力が落ち、歩きにくくなり、さらに転びやすくなります。食欲や体力も落ち、肺炎などの合併症が起こることもあります。
この悪い流れが、寝たきり、要介護、寿命の短縮につながっていきます。
骨折は、がんに負けないくらい重いことがあります
骨粗しょう症の骨折の中でも、大腿骨近位部骨折(股関節の近くの骨折)はとても大きな影響があります。
股関節骨折のあとには、もとのように歩けなくなる人が少なくありません。長期的な調査では、骨折前の生活レベルまで戻れない人が多く、介助が必要になる人も少なくないことが報告されています。
動けなくなると、それは「命に関わる」かもしれません。
多くの方は「命に関わる病気」と聞くと、まずがんを思い浮かべるかもしれません。もちろん、がんは重大な病気です。ですが、高齢者の股関節骨折も、それに負けないほど重い出来事です。
日本の国立がん研究センターでは、がん全体の5年相対生存率は64.1%と示されています。
一方で、近年の研究では、股関節骨折のあと5年後に生きていた人は、男性では3人に1人未満、女性でも半数未満と報告されています。
また2025年の研究では、股関節骨折の死亡率は、女性の乳がん・甲状腺がん、男性の前立腺がんより高いと報告されています。
つまり、「骨折はただのけが」ではなく、場合によっては一部のがんよりも深刻なことがあるということです。
1回骨折すると、次の骨折が起こりやすくなります
骨折のこわさは、1回で終わらないことです。
最初の骨折のあと、次の骨折が起こりやすくなることが知られています。特に最初の骨折のあとの2年間は、次の骨折が起こりやすい時期とされています。
これがドミノ骨折です。
背骨を骨折して姿勢が悪くなる。
転びやすくなる。
次は手首を骨折する。
そのあと股関節を骨折する。
このように、骨折が次の骨折を呼ぶことがあります。
骨折をくり返すほど、命の危険も高くなります
2023年の大規模研究では、最初の骨折のあとだけでなく、次の骨折のあとにも死亡リスクが大きく上がることが示されました。
特に、次に起こった骨折が股関節骨折だった場合、死亡リスクはさらに高くなっていました。
つまり大切なのは、1回目の骨折を見逃さないこと、そして2回目、3回目の骨折を防ぐことです。
骨折を防ぐことは、元気に暮らす時間を守ることです
骨折を防ぐことは、単に骨の写真や骨密度の数字をよくするためではありません。
自分の足で歩くこと、
買い物に行けること、
トイレや入浴を自分でできること、
そんな毎日の生活を守るためです。
こんな方は、一度相談をおすすめします
- これまでに背骨・手首・肩・股関節の骨折をしたことがある
- 最近、身長が縮んだ
- 背中や腰が曲がってきた
- 転びやすくなった
- 家族に「背中が丸くなった」と言われる
こうしたサインがある方は、骨粗しょう症の検査や治療で、次の骨折を防げる可能性があります。
まとめ
骨がもろくなって起こる骨折は、ただの「けが」ではありません。
骨折は、歩けなくなること、人の助けが必要になること、寿命が短くなることにつながることがあります。
そして、股関節骨折のように、一部のがんより死が早まることさえあるのです。
だからこそ、最初の骨折を見逃さないこと、次の骨折を防ぐこと、それがとても大切です。
未来の元気は、骨から。
骨折予防は、健康寿命を守る第一歩です。
引用文献
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- Cawthon PM, Drake MT. It is not “just a fracture”. JBMR Plus. 2024;8(5):ziae022. doi:10.1093/jbmrpl/ziae022
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